空論オンザデスク

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風立ちぬ。 原作を読んでみた。

ジブリ製作で何かと話題の「風立ちぬ」ですが、原作の小説とはずいぶん違ったものであることは知られた事ですよね。

原作ではゼロ戦の設計者は出てこないし、ヒロインは菜穂子じゃなくて節子。ただ物語のテーマは同じなのかも。
まだ映画のほうは見てませんので、何とも言えないけれど。

だから映画を観る前に、原作を読んでおいてもネタバレにはならないんじゃないかと。原作者の思想と宮崎監督の精神がどう融合しているか、より理解しやすくなると思います。

以下、原作の感想。


【あらすじ】
昭和初期、レトロな雰囲気のサナトリウム(長期療養施設)で織り成される切ない恋愛小説。
良家のお嬢様の節子は、当時は不治の病と言われていた結核を患い、療養のため、八ヶ岳にあるサナトリウムに入ることになる。
節子に恋をしていた売れない小説家の私は、彼女に付き添う決心をする。
人里から隔絶した高地にあるその施設は、美しい自然の景色のうつろいと、どこか生きることを諦めた人々特有の静けさに満ちていた。
私はそこで、次第に衰えゆく節子に寄り添いながら、一種の幸福に満たされる。
2人だけの小さな空間で2人だけの時間を過ごし、互いに互いだけを所有すること。それは、「真の婚約」。
運命はあらがい難く、死の淵がやがて2人を永遠に分かつことが分かっているから、「その余りにも短い一生の間にどれだけお互に幸福にさせあえるか」を追求し、時を惜しみいまを慈しんで過ごすようになる。
私は節子を小説にしようと、傍らにいながらペンを走らせようとするが。

【読後感】
美しい小説だ。死という、あらがい難い運命が待ち受けていることが分かっているからこその美しさ。
静かな回想風の独白が、ああ、これを書いている作者の傍にはもう、と名状しがたいさみしさを感じさせる。
主人公の献身は、逆説的だが悲愴感をあまりまとわず、愛する節子とともに居られる刹那を噛み締めているようで、また読者に、なぜそこまで身を捨てて人を愛せるのかと煩悶させる。

おすすめ度★★★★☆
こんな人にお勧め
泣きたい人
切ない話が好きな人
辛い経験をした人