空論オンザデスク

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ガンと老化

文藝春秋8月号 立花隆の対談より引用

「p16というガン抑制遺伝子は、老化を促進する働きもある。老化というと、白髪が増えたりしわができたりすることをイメージしますが、細胞レベルの老化は、ある意味でガンを抑える機構なのです。老化は実はガンと裏返しの現象で、人工的に老化を止めるとガンになることがわかっています。つまり若返らせようと下手に遺伝子をいじるとガンになるということです。よく不老不死などと言われますが、医学的に不老不死の達成は困難です。なぜなら不老にするとガンができますから、逆に死が早まるというジレンマが生じます。」

老化とガンが相反する関係にあったとは。
自分の感覚では、この二者は同じ側にあるものだった。老化もガンも、人間に死をもたらす、サタンの手先のはずだった。それが違うのだという。
ではどちらがサタンでどちらが神か。
ガンを抑制するのだから、p16は人に慈悲をもたらしているように見える。けれども、それが同時に老化を促し、人を死に近づけている。倫理的には矛盾している。
しかし、生物学的には理にかなっているのである。ガンとは、細胞の異常な増殖のこと。細胞はその役目が終わると自動的に死ぬ。これをアポトーシス、細胞の自死という。細胞が新しく生まれる速度よりも死ぬ速度が早ければ、これ即ち老化である。一方、細胞が死ぬべき時に死なずに増殖しつづければ、ガン化したことになる。

生きること、死ぬこと。
このふたつは僕が思っていたように単純ではないのかもしれない。
生き続けることが生物として善だとするなら、なぜガン化などが起こるのだろうか。そもそも善悪などを重ね合わせることすら間違っているのか。しかし人は、古くから人の生き死にを神仏の為せる業としてきた。死は時に罰ともなり、慈悲にもなった。
ガンはどうなのか。自分はガンになるのか。日本人は2人に1人がガンになり、3人に1人がガンで死ぬ。確率で言えば自分もいずれなるだろう。諦観と恐怖が襲う。その時がきた時に、慈悲だと思うのか、罰なのか。それともまったく別の感覚なのか。分からない。