空論オンザデスク

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子育て、親育てを中心としたブログ 教育本、子育て本、鉄道もの、プラレール、トミカ系おもちゃなども。

アンネの日記 読後感

内省と精神的成長力で得た心の平静は、より広い視野をもたらした。
だれも自分のことを理解してくれない。くれない症候群の彼女は、狭い隠れ家の中で口うるさい大人たちから逃れることができない。
何かいう度に、アンネにとっては正当な意見の表明なのだろうが、大人にとっては生意気なキイキイ声でしかないのだろう、だまりなさいとたしなめられる。
しかし、幼さの堂々巡りは、母親との大喧嘩をもって転機を迎える。「困った大人」デュッセル氏との小競り合いは度々続くけれども、以前のように「思ったことを全部」まきちらすことはなくなる。そして、ペーターとの友情が思慕に変わっていくにつれ、大人としての意識が目覚めていく。
彼女の成長は、恋愛から人生論へ、民族の運命へ、さらにジェンダー論へと果てしなく広がっていく。1944年8月4日、ついに隠れ家の存在が当局によって暴かれ、拘束されてしまう数日前に、日記は唐突に終わる。
私たちはその運命をあらかじめ知った上で読み、アンネがあふれんばかりに表明している将来の夢が決して叶えられないことを知っている。日記の日付が進むにつれ、終わりが近づいてくることを意識する。隠遁生活の緊張と恐怖のなかでつちかわれた、鋭利な洞察と豊かな人間性が、その命の終わりを決定づける日のまさに直前に輝かしい光輝を放つことを、知っている。だからいっそう悲しく、やりきれない思いにかられる。