空論オンザデスク

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子育て、親育てを中心としたブログ 教育本、子育て本、鉄道もの、プラレール、トミカ系おもちゃなども。

マッドマックスのような世界感が楽しめる忘れられた名作「スワン・ソング」

 ロバート・マキャモン(Robert R McCammon)は、90年代ホラーの旗手としてスティーブン・キングなどと肩を並べた存在だという。

日本の出版界からすっかり忘れ去られてしまっているということは、2000年代に入って新刊の翻訳が1作品しか刊行されていないということでもわかる。

 

ちょっと受け入れがたいハチャメチャ設定

 

そんな風に日本人の中で定着しなかったのは、キャラと世界設定のハチャメチャさだろうかと思う。

時は米ソ核戦争が起こった直後の北米大陸。・・・とか来た時点で、北斗の拳を想像してしまう人が少なくないはずだ。自分もその一人である。

核の嵐が国土を荒廃させ、放射能の影響があらゆる生き物に及び(ちょっと受け入れ難いチープな影響なのである。)、人心は乱れて世界が滅びていく中、救世主の運命を担った少女が予定調和的な出会いと活躍をして人々を救うというお話なのである。

前述の放射能のせいで、主人公の少女は超能力めいた能力を得てしまうし、悪役は悪役らしい怪物みたいな力を手にしてしまうし、野犬なんかはゾンビみたいになってしまう。放射能の影響というものが差し迫った問題として真剣に認識されている現代日本の価値観からすれば、ふざけるなと言いたくなるような設定である。

 

これはファンタジーだ。

しかし、この話は近未来を扱ったSFとしてではなく、あくまで別世界を描いたファンタジーだと割り切るべきなのだ。

神に選ばれた少女が救世主になるのも、その世界観なら無理なく受け入れられる。

そうすると、際立ったストーリーテリングの巧みさと、キャラクターの魅力が浮き上がってくる。彼らはみんな欠点だらけで、誰一人(少女スワンはその立場上聖女としての威厳を失うことはあまりないが)ゆがんだ人格をさらけ出さないものはない。

明日をも知れぬ運命で、いちいち決死の場面を間一髪でかわし、重病にかかったり危篤状態になったりとピンチだらけになりながら、知恵と勇気と幸運で(ややこれが多めな感じはするけれども)乗り切っていくところにこの小説のおもしろさはあるのだろうと思う。

 

kindle版は洋書しかない

出版ものは探すのがなかなか難しく、書店より図書館で探す方が早いかもしれない。

kindleなら英語版しかないが、割と平易な英文なのでこの際挑戦してみようという人にはオススメかもしれない。

 

Swan Song (English Edition)

Swan Song (English Edition)

 

 翻訳本は福武文庫版と新書版があるが、どちらも中古の取扱いのみとなっている。

スワン・ソング〈上〉 (福武文庫)

スワン・ソング〈上〉 (福武文庫)

 

 

スワン・ソング〈下〉 (福武文庫)

スワン・ソング〈上〉 (ミステリペイパーバックス)

スワン・ソング〈下〉 (ミステリペイパーバックス)

 

ロバート・マキャモンが気に入ったら、「狼の時」もおすすめ。

人狼の力を持った一族が第二次世界大戦時に大活躍してナチスドイツと戦うというもの。歴史改変ものが好きならきっと熱中するはず。 

 

狼の時〈上〉 (角川ホラー文庫)

狼の時〈下〉 (角川ホラー文庫)