生存者ゼロ 行間で万単位の人が死ぬパニック小説の魅力
「パニックもの」というジャンル
隕石が飛んできたり地球が全球凍結したり地球の自転が止まったりする大災害もののパニックムービーが結構好きだ。不謹慎なことこの上ないが、やっぱりスケールの大きさと画面の派手さには目を見張ってしまう。こういう映画は大抵、主人公たちが決死の努力をしている間に万単位の人々が画面にも映らず犠牲になっているので、そういうことを想像するとうそ寒くなるのだが、とはいえ数秒のギリギリのところで地球が救われるかどうかのミッションには心を奪われる。
さて、この「生存者ゼロ」は、ジャンルでいったら何だろう。
始まりは北海道根室沖の洋上採掘基地。突如として基地のスタッフが原因不明の死をとげ、しかも遺体はズタズタになっているという状況である。
次は北海道東部の町。ここも一夜にして全滅する。上と同じく町の住民は無残な遺体となって発見される。
こういう筋だと、新種の伝染病が突如発生して人を殺しつづけるアウトブレイクものかなと思う。
しかし、監視カメラの映像から、人々が恐怖にかられて逃げ惑っていたり、全滅した部屋が内部から施錠され、ドアにはバリケードが作られていたりする事実が判明していくと、これはひょっとしてアウトブレイク+ゾンビものかなとも思えてくる。
それら全てを否定する「敵」の存在は、ストーリーの終盤になっていきなり明かされるのである。そこから怒涛の勢いで最後の戦いへとなだれ込み、まさに行間で万単位の人が犠牲になるハルマゲドンをやらかすことになる。
主人公が、経験豊富で冷静沈着な自衛官と狂気に取り憑かれた天才科学者のコンビというのも良い。少年少女ではないのが良いと思う。どうしても現実的に考えて、経験の浅いお子様じゃこういう危機には立ち向かえないと思うから。
中盤で出てきた女性は、真の敵の存在を明らかにするためには必要不可欠な要素だったとはいえ、なにか後付けの感が否めない。魅力的なキャラクターだとは思うけれど。
あと、民主党政権をモデルにしたと思われる政権首脳部の腐敗と無能ぶりは、ちょっとデフォルメしすぎのような気がする。いくらなんでもそこまで腐ってはいないでしょうと思いたい。主人公の有能さを際立たせるためには必要なんだろうけれど。
ネタバレを避けるため、ここでは真の敵の存在を明かすことはしませんが、これまでになかった新発想の敵だと思います。パニックムービーが好きな方にはハマるんではないでしょうか。