空論オンザデスク

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「夜露死苦現代詩」の世界2 脱力系笑いの元祖ここにあり。点取り占いの異次元

昨日ご紹介した「夜露死苦現代詩」をまた取り上げます。
 

第2章 点取り占い〜について

 
点取り占いとは、駄菓子屋などでボール紙に貼り付け状態で売られているクジ遊びのようなもの。
一つ剥がして買い、包みを剥がすと16枚の紙片が折りたたまれている。それぞれのクジには、1から10までの点数と、黒丸、白丸、反黒丸の3種類の記号。それに短い言葉と場合によって挿絵が描かれている。
と、言葉にして説明しても良くわからないでしょうから、一度検索してみていただきたい。Googleの画像検索をかければいくらでも出てくるはずである。
 
 
遊び方は簡単で、16枚のクジに書かれた点数のうち、白丸の点数の合計から黒丸の点数の合計を引き、プラスの数なら反黒丸の合計点数を足し、マイナスの数なら反黒丸の合計点数を引く。その合計点数が、「50点以上なら上々、50点以下なら反省することあり。」という、面倒な計算の割に面白くもないものだ。
 
では点取り占いの何が面白いのか。
それは、クジの一枚一枚に書かれた言葉だ。それが時に付けられた挿絵と相まって、不条理ともいえる不思議な世界を創造している。くすりと笑える時もあれば、何コレと思うときもあるだろうし、真面目な人ならこんなもんで金を取るのかと怒り出すかもしれない。
 
夜露死苦現代詩」が掲載しているもののなかで、自分がおもしろいと思ったものを挙げてみる。
 
 
君はもっとえんりょしなければいけません
あんまりされたくない類の注意だが、いきなり言われると「はぁ」と妙に納得してしまうかも。
鳥にふんをひっかけられる
壮絶に嫌な体験ですが、この中だとさほどインパクトもないかもしれない。
グライダーで飛んでからすと仲よしになった
メルヘンだ。からす、いうあたりが三丁目の夕日みたいでホロリとくる懐かしさがある。
 
おいもをたべすぎてお尻がやかましい
これは完全にギャグだが、「やかましい」という表現が秀逸。
雨の降る日は天気が悪いとは知らなかった
確かに。既成概念を問い直す哲学的な詩句である。
何でもよいから教えてくれ
とにかく範囲広すぎの無茶振り。不条理すぎて笑えるのジャンル。
 
エレベーターに一人で乗るとこわいです
これも確かに、と唸るしかない、日常生活上の心の襞を突く作品。
どんどんはしってどこえ行くかわからない
どこ行っちゃうんだよと逆に突っ込みたくなる、不条理的ボケの世界。
一番しみったれなのはだれだろう
ほんとに、誰なんでしょう。
目をむいて鼻の先をなめろ
無理っす。
あつくてあつくてユゲがでてくる
出てきちゃうんだから相当あついんでしょう。
お前は三角野郎だ
三角野郎って、どっちかっていうと悪くない言われようかも。80年代のツッパリのイメージがある。「俺もお前も三角野郎の愚連隊」のような。
 

夢と現実の二つ写し

 
前後の脈絡全くなし。
意味不明な言葉もある。
しかし、そこから湧き上がってくる不思議なユーモアはなんだろう。
「目をむいて鼻の頭をなめろ」とかいきなり言われたら面食らってしまうしかない。そもそもできないし。
「あつくてあつくてユゲがでてくる」は、どんな状況なんだか想像がたくましくなる。「あつくて」が2回繰り返されているあたり、ものすごくあついことは分かるが、ひらがなで表記しているため「暑い」「熱い」「厚い」のどれなのか分からないから余計に意味が不明なのだ。
 
これらの言葉たちはどこで生まれたのか。
それは戦後まもなくのこと。ミヤギトーイという玩具会社の社長が、子供達に娯楽を提供するために作ったのだそうだ。
「寝ながら思いついた言葉を書き留めた」もので、寝覚めでぼんやりしているときに、なんとなく浮かんできた、とりとめのない泡のように浮かんでは消える想念をひたすら記録しては商品にしていったという。
そう言われればなんとなくそんな感じがしなくもない。子供が時々発する寝言にも似ているような気がする。
夢かうつつか。前回の老人病院の患者たちが漏らした言葉たちのように、日常の世界と非日常の世界が重なりあったところにこれらの言葉たちが生み出されている。夢という異世界が、寝起きという特殊な状態を通して現実世界と絡まり合う。だからこその、このユーモアなのだ。
 
点取り占いは、もちろん駄菓子屋でも置いているが、近所に駄菓子屋がないという方は、こちらで1セット大人買いはいかがだろうか。結構長い期間、この不条理世界が楽しめるはずだ。
 

 

 

 

点取占い 12付

点取占い 12付

 

 

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