ハードボイルドとはこういうことか
ハリー・ボッシュシリーズの存在を、今まで知らなかったことが信じられない。
ハリーといえばポッターくらいしか思い浮かばなかったけれど、大人の読むべきハリーはこっちだった。長年の勘違いを痛感した読書体験だった。
ハリー・ボッシュを知るきっかけになったのが、amazonプライムビデオの「BOSCH」。
独占配信です。他では見れません。
現在セカンドシーズンまで配信されています。サードがなかなか出てこないので、ちょっと心配。
「ハードボイルド小説」と聞いて、何を思い浮かべますか?
タフでニヒルなガイが敵を倒して正義を実現する、そんなイメージですよね。
ボッシュも例にもれず、ハードボイルドの類型にきっちりと当てはまるキャラクターではあります。
けれど、自分がこれまでこのカテゴリーを敬遠してきた最大の理由である、「超人生」が全く見られないことが、すんなり目を開かされた要因でした。
ハリーの正式な名は、「ヒエロニムス」。「アノニムス(無名の、無記名の)」 と韻が同じ。「韻が同じ」と言われても、日本人の私にはピンとこないですが、ボッシュは名前について尋ねられるたびにこう答えるので、きっとアメリカ人にとってはすんなりな説明なんでしょう。
母親は娼婦。10代前半で母親と引き離され、強制的に施設に入れられ、そのたった1人の母もまもなく失う。ベトナム戦争を戦い、後に警官になりと、ハードな人生の中で、数え切れない喪失を味わってきた人物として描かれています。
そして第1作目から数巻分は、すべて煎じ詰めれは喪失の物語です。
この上何をなくせば良いのだろう、と言うくらいです。戦友、恋人、同僚、家、職等々。作者マイクル・コナリーは、非情なほどに次々と失わせながら、ボッシュをして「使命」へとひた走らしめます。まるで、孤独の中にこそ真実があると言わんばかりに。
- 作者: マイクルコナリー,Michael Connelly,古沢嘉通
- 出版社/メーカー: 扶桑社
- 発売日: 1992/10
- メディア: 文庫
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第1作、「ナイトホークス」はまさに孤独の物語だと思います。
もちろん刑事物ですから、どんでん返しの推理や手に汗握るアクションもこみこみで、しかし一方では「孤独」が際立った色彩を、与えている作品です。
この巻のみならずシリーズ全体を通してキー・アイテムとなる絵画「ナイトホークス(夜ふかしをする人々)」が登場します。
ナイトホークス、つまり「夜鷹」。
ドラマ版は、小説版のキャラクターをかなり忠実に再現していると言えます。
原作とは異なった設定で、巧みに原作の世界観を描ききっています。
どちらもおすすめ。