空論オンザデスク

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アクティブラーニングが言葉だけになる理由

新学習指導要領の、間違いなく重要な柱の1つとなるのが、「アクティブラーニング」ですね。

私もそれなりに知っておかなくてはと思い、ひとまず本書を読んでみました。

この道の先駆者である方が書いたもののようですし、ざっくりとして分かりやすいというレビューも多かったので。

 

 

「アクティブラーニング」とは、これまでの「講義を聴いてノートを取る」という「受動的な学習」ではなく、学習者が自ら学びを行うという能動的な学習方法を指し、具体的には調べる、話し合う、発表するなどの形態をとること。という定義だったかと思います。

調べる、話し合う、発表する、とかいうと、私なども小学校のころ、社会科で新聞作りなどをした記憶がうっすらとあるので、そんなものかなと思っていました。

筆者が言うには、アクティブラーニングというのは、学習者の能動的な学習を言うのだから、「完全に一方的な講義以外の全ての授業が当てはまる」ということでした。かなり広い解釈ですが、こう理解することで、アクティブラーニングが何か得体の知れない難しいものだという忌避感を減らすことはできそうです。

 

筆者は高校の物理の先生をやってらして、日々の授業の中で試行錯誤しながらアクティブラーニングを実践されていた。その経験から書かれているので、非常に具体的かつ腑に落ちやすい内容です。

授業の構成は、解説15分、話し合い・演習問題35分、確認テスト15分です。

その日の学習内容を冒頭15分でやってしまうというのはなかなか非現実的な感じがしますが、板書は一切行わずパワーポイントで作成したスライドで授業を行う。ノートは取らせず、パワーポイントを印刷したプリントを配る、で、黒板に書いたりノートを取ったりする時間が省け、大幅に時間が節約できると言います。

演習問題では、教え合い、立ち歩きを推奨し、生徒だけで問題を解決させるようにします。このへんの微調整が筆者ならでは。問題が簡単すぎると議論が活性化しないし、難しすぎたり多すぎたりしても同じ。ちょうど良い難度と分量に調節するのは、経験値が要りそうです。

最後に確認テスト。振り返りも含めて、この時間が1番大切だと言います。授業に時間がかかったりすると、真っ先にカットしてしまいがちなパートですが、授業の中では最も重要で、解説を削ってでもやる価値はあるそうです。

 

さて、この本を読むにつけ、生徒が自分たちで学ぶ、というスタイルがきっちりと進行するには、授業実施者の綿密な計画が必要で、そのためには経験の蓄積が前提だということが分かります。

つまり、アクティブラーニングは理論ばかりを振りかざしていても全くダメで、学習者とのコミニュケーションの中で作り上げられていくものだということです。巷で取り沙汰されているアクティブラーニング系の書籍やノウハウも、教える側が取り込んで、噛み砕き、自分なりの方法論に落としこまないと、生きた授業にならないと思います。そういう意味では、ものすごく属人的でアナログな技術だと思います。このノウハウの継承には、対人研修や経験者によるメンター制度などが不可欠でしょう。

とすれば、次世代の教育とは、一周回って初めに戻る。つまり古代以来の徒弟制度のようになっていくのかもしれません。