人生二回結婚説
「粋な大人たちはどこへ消えた」と題する随筆
戦後の文壇で活躍した木々高太郎は、医学者林髞としても一事業をなした人物で、戦前ソ連に留学して有名なパブロフ教授の条件反射(「パブロフの犬」)を日本に紹介した人物であり、また様々な推理小説を世に残した人物である。
その人が、唱えた「人生二回結婚説」。
男性が五十、六十になったら今の女房と別れて若い二十、三十の女と結婚する。若い女性は精神的にも経済的にも安定した男性から様々なことを学び、成長していけるし、男性は若い女性からいきいきとした生命力を吸収できる。
そして、二十年、三十年後、その女性は老いたる夫を看取り、相続した資産で安定した生活を営み、今度は自分より二十も三十も若い男性と結婚する。男性は年上の女房から様々なことを伝授され一人前の男になる。女性は二十年、三十年後、妻を看取り、今度は若い女性と結婚する・・・。
これによって、日本の国力は増進するという林氏の意見だったらしい。
その当時、この説はマスコミなどで大変もてはやされたということで、ただ一方で冗談半分に膾炙しただけとのこともあるが。
なんとも自分勝手な、説を唱えたものである、と考えるひともいるだろう。この人はただ自分が古女房と別れて新しい若い嫁さんを貰いたいだけで、それを正当化したいだけじゃないかとも思われ、下心見え見えの学説ともいえぬただの酒飲み話のようでもある。
でもこれを読んだとき、若いときはオスで歳を取るとメスになる魚を思い出した。確かに、経験豊富な一方と若くいきいきとしたもう一方のペアというのは組み合わせとして強いのかもしれない。刑事ドラマでも新人のイケメンと渋いベテランが組むのが王道だ。