立ち読み2時間の収穫
休日の自由時間は、大きい書店で過ごす。
棚から棚へとふらふらしながら、本を手にとってぱらぱらめくる。こういう気楽さは、まだネットにはない。
楽しめるのは、「ちくま文庫」の棚。マニアックかつ魅力的なタイトルがところ狭しと並ぶ。
その中でこれはと思った本を列挙してみる。
○「夜露四苦現代詩」 都築響一
「夢は夜開く」の歌詞がこんなにいくつもバージョンがあったのかと驚く。藤圭子の有名な歌は、このひとつでしかないという。
「7に5を足しゃ9になるけれど
4に4を足せば苦になるわいさ
夢は夜開く」
うろおぼえ。昔の日本人の諧謔がにじんでいる。
他にも、ラップミュージックの詩を味わったりする章もある。
○「現代文読解の根底」 高田瑞穂
伝説的な現代文の先生による本。
これは読解法を授けるというよりは、現代文というもの、そのものの成り立ちや思想的背景を分かりやすく論じたもののように思えた。
○「ちくま哲学の森 悪の哲学」
このシリーズはいつか全部読みたい。
十数人の作者によるオムニバス形式。
悪とはなにか、というよりも悪にまつわる様々な視点を与えてくれる。
善人の善意より、賢明な悪人の意志のほうが絶対良い、という記述が面白かった。
親鸞の教えとはまた一味違った論理のよう。
○「革命について」 ハンナ・アレント
ハンナ・アレントは20世紀の思想家、革命家。
社会主義を奉じるも、ボルシェビキとは一線を画し、理想を追い求めた。アイヒマン裁判について、当時の世界的な極刑を求める論調に、冷や水を浴びせて批判された。
○「絶望の裁判所」 瀬木比呂彦
元裁判官の、裁判所の裏側を暴いた作品。
裁判官と言っても官僚的機構に縛られた人間の群れなんだな、と思わせる。
○「服従の心理」 スタンレー ミルグラム
人間の服従心理について、実験をもとに明らかにした本。ナチスドイツの行為など、国家的な政策が普通の国民に暴力を強いたとき、たとえば目の前の子供を殺すように命令されたとき、一般人の道徳をもった普通の市民がどのようにしてその命令に従うのか、というもの。
○「凍てつく世界」 ケン フォレット
「大聖堂」を書いた作者による新作。第二次世界大戦をあつかったもの。時間的空間的スケールの大きい大河ドラマで定評のある作者が、今度は中世ではなく20世紀をあつかっている。
これは是非読まなければ。