空論オンザデスク

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公立中高一貫校のはらむ矛盾

公立中高一貫校の矛盾


ひところの開校ラッシュがおさまり、倍率もだいぶ落ち着いてきた感のある首都圏の公立中高一貫校。中学進学の第三の選択肢として、すっかり定着したと言える。
これまでの国私立中入試と全く異なる入学試験は、「適性検査」と言い、算数、国語、理科、社会などの教科の枠に当てはまらない特殊なものである。暗記系の問題はほとんど出ず、思考力、判断力、記述力などといった力を見るもので、公務員試験の数的推理のようなと言えばイメージしやすいかもしれない。
たとえば、デジタル時計の各々の数字を4つ組み合わせて、裏から見ても日付として通用するパターンは何通りあるでしょうとか、そういう日常生活で接しうる状況や情報を操作したり解釈したりして解くのである。
初めのころは、同じような問題がそもそも存在せず、塾での対策が極めて困難だと思われていた。塾は、長年多くの中学入試問題を研究し、よく出題されるパターンの問題をリストアップし、体系的にカリキュラムをつくってきた。適性検査は、そういうカリキュラムではまったく対応しきれず、パターン練習を繰り返し行って得点力を高めるという方法論が使えなかった。
そのため、当初の公立中高一貫校には、塾には通っていないけれども地頭力がある子供が受かっていたと思う。
だから、塾通いができない家庭の中から才能のある子供を拾い上げて、経済的に豊かでない家庭にも高度な教育を提供するという公共の機関にふさわしい機能が期待された通りに備わっていた。
しかし、今日では塾も経験を積み上げ、適性検査で高得点を取らせる方法論を確立できている。今の公立中高一貫校は上位私立中と肩を並べる難関校ぞろいであり、塾にいかずに合格するのは至難の業だろう。結局、塾に通わせられるだけの経済力をもった家庭だけが受験させることができる。
強調したいのはここである。
公立中高一貫校はもちろん税金で運営されている。施設も教育内容も一流のものをそろえているので、その運営費は普通の公立学校の比ではない。税金はもちろんどの家庭からも徴収している。けれども、そのサービスを利用できるのは事実上、富裕層だけなのだ。税とは本来的所得の再分配を行う機能が期待されている。所得の高いところから多く取り、低いところへ厚く分配する。そんなことは中学の公民の授業で習う基本的なことである。しかし公立中高一貫校はその逆をいってしまってはいないだろうか。低所得者から集めた税金を高所得者の子弟教育に使っているわけだから。

問題はそれだけではない。
落ち着いてきたとはいえ、公立中高一貫校の倍率はまだまだ高い。低いところで4倍、高いところで10倍を越える。大学受験と大して変わらないという人もいるかもしれないが、この問題は本質が全くことなる。大学入試はAOから始まって推薦、センター利用入試、私大一般がふつう数回あり、全学部統一入試や学部入試、国公立前期、後期など回数がとにかく多い。とにかく受け続ければいつかは当たるというやり方が可能なのである。しかし、首都圏の公立中高一貫校はすべて2月3日の1回のみ。しかも一校しか受けられない。4倍~10倍などは下手をすればギャンブルの類いであり、しかも一発勝負。それが果たして健全な制度と言えるのかどうか。

公立中高一貫校受検は、ひところの熱狂的なブームが去りつつあり、今はその検証期にあると言えるだろう。