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「銃・病原菌・鉄」 世界的ベストセラーはやっぱりスケールが違う

本日の一冊は「銃・病原菌・鉄」ジャレド・ダイヤモンド著です。
 

大体の内容

地球上に、文明化と産業化が進んだ地域と遅れた地域、全くその萌芽すらない地域があるのはなぜか。世界に先駆けてこれらを達成したヨーロッパは、かつて世界を分割し自分達のほしいままに支配した。いまは、往時ほどではないにしろその影響力は色濃い。世界のなかで富める国はほとんどがヨーロッパと合衆国だし、政治、文化のメインストリームを握っているのも同じくだ。一方、ニューギニアではいまだに狩猟採集を生業とする人々が少数のグループごとに移動生活を営んでいる。この違いはどこから来るのか。ヨーロッパ人は遺伝的に優れており、ニューギニア人は進化が遅れているのか。だがしかし、筆者、ジャレド・ダイヤモンドは言う。人としての知能や知性はむしろニューギニア人に優れた人物が多い。原始的な生活を送っている人でも、一度大きな都市に移り住めば、同じように都市の複雑なシステムを理解するようになる。では、両者は生まれ育った環境的要因によって差をつけられたことになる。一万四千年前。人類が最後の未踏の地、南米大陸に定着したころ。この時代をスタート地点とする。この時の人類はすべて狩猟採集民であり、極めて原始的な道具しか持たず、移動生活を送っていた。この時代からヨーロッパが世界を席巻し始める西暦1500年代までに、どのような環境的要因が働き、どれだけの違いをもたらしたのか。筆者が繰り返し問いかけるのは(J・ダイヤモンドは繰り返しがものすごく多い)、スペイン王カルロス二世の軍隊が海を渡りインカ帝国を滅ぼしたのは何故か。なぜその逆、インカ帝国の王アタワルパの軍隊がスペインを滅ぼしたのではないのか、である。
 
スペイン、ポルトガルの軍隊が少数の兵をもって中南米の成熟した巨大帝国を二つも、それも徹底的に滅ぼしつくしてしまえたのは、3つの強力な武器があったからで、それは銃、病原菌、鉄である。これらのなかでも最も多くの人間を殺したのが天然痘を始めとするユーラシア産の伝染病で、全く耐性のない新世界人を大量殺戮することになった。他の二つ、銃と鉄製の武器防具など、それらを持った社会と持たなかった社会の違いはなにか。それは、端的に言えば食料生産と家畜飼育がどれくらいの規模で行える可能性があったかによる。食料生産が行われることで、余剰生産物ができる。これは、集団内のすべてのメンバーが食料獲得に従事しなくてもよくなることを意味する。これによって、職人や書記、兵士、王侯、聖職者など、専門的な職業ができるとともに人口が増えて行く。また、家畜の飼育が行われることで食料が増え、移動手段が確保でき、農地を耕す効率が上がり、軍用に用いれば強力な軍事力となる。さらに、家畜由来の病原菌に対する耐性を得ることができる。
 
食料生産と家畜飼育を可能にするのは、栽培化が可能な植物がどれくらい近くに存在していたかと、同じく家畜化が可能な動物がどれくらい存在していたかということである。そして、植物の栽培化と動物の家畜化は、一から始めることが困難であるがゆえに、いったん完成したものがあればどんどん広まっていくという性質を持ている。伝播である。しかし、植物や動物は原産地とある程度同じ気候や環境が保証されていないと、その場所に適応できない可能性がある。
そこで、ユーラシア大陸と他の大陸の地理的な相違点に目を向けてみる。ユーラシア大陸は東西に長い大陸であるが、アフリカ、南北アメリカ大陸は南北に長い。同じ緯度付近で同じような気候帯がひろがっているケースが多いから、植物や動物は、その伝播する速度において南北方向よりも東西方向のほうが圧倒的に速いといえる。このような利点がユーラシア大陸、とくに現在の中近東地域において文明が勃興するのに有利な条件を揃えていて、それによってスタート時点での優位がほぼ決定したという。
 

読後感

 
歴史・考古学と、文化人類学、生物学など、様々な学問分野を総合して人類史の根幹を探るというスケールの大きさには目を見張るものがある。素直にすごい本だと思う。この本に書かれている断片ひとつひとつについては、決して初めて言われたことではない。けれど、それらを総合してひとつの人類史を構築しているところに偉大さがあるのだと思う。上下巻で合計600ページを超える大作なのだが、前半に総論で後半に各論という構成のため、筆者の言いたいことを手早く知りたいなら上巻の前半だけ読めばよい。そういう体系化された分かりやすい構成も、これだけ有名になった要因であると思う。
 

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