空論オンザデスク

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子育て、親育てを中心としたブログ 教育本、子育て本、鉄道もの、プラレール、トミカ系おもちゃなども。

ううむとしか言えねえ。同業者からみた受験サプリ。

diamond.jp

 

予備校は十年以上前から映像化が進んでいて、いずれこういう商品が出てくることは同業者ならだれでも予測できたはずだった。

少子化大学全入時代、浪人当たり前時代から現役当たり前時代に突入し、もう有名講師の授業に学生が殺到するような時代は終わったと言われて久しい。現役の高校生が学校や部活や遊びの合間に気軽に授業を受けられるよう、実力講師の授業を映像化して、どこのサテライト校舎でもいつでも受講できるようにしていった。けれど、ネット配信はまさに収穫逓増の典型的なモデルだ。物量を先に備え、多くの顧客を獲得できる企業に圧倒的な優位性がある。優位を取った企業は、他が真似できない低価格を打ち出せる。無料にしたって稼げる。しかし、塾業界はどの会社も中小に毛が生えたような規模だったから、そういうことをする体力はどこにもなかった。そこで、今回のリクルートの参入で、そういう「全すくみ状態」に終止符を打たれた格好になったのだろう。

スマホで授業なんて身につくものか、続くものか、そんなことで大学受験を勝ち抜くなんて甘い、そんな高をくくった声がいたるところで聞こえたが、そうは言っても安いものは安い。とりあえずやってみようとだれもが思う。そういう人の中で数パーセントでも実際に活用できる高校生がいたら、どの塾よりも利用者数は多くなるに決まっている。だから、「ううむ」としか言えない。ITベンチャーの成功者が言うことっていつも決まっていて、「今までだれも気づかなかったことに俺は気づいたよ、ふふん。」みたいな傲慢さがあからさまに押し出されている。いや、気づいてはいたよ、怖くて手が出せなかっただけで。

受験業界は、これか、個別指導か、というような二者択一になっていくんだろう。安い映像で自学自習できる学生はこれ、それができず他人に手取り足取りやってもらわないと勉強できない学生は個別指導へ。個別指導だってもうあと何年かしたら人件費の安い外国に外注なんてことになっていくだろう。グローバル化の波はもうそこまで来ている。普通の塾、普通の予備校というものはいずれ消滅する運命だ。

結局、塾が生き残る道は専門化しかないだろう。偏差値40から慶応に受からせます。みたいな。そういうニッチをさがして、どこよりも先に市場を取り尽くしてしまうまで安心できないような、不毛の荒野に蕪を植えるような話になっていくのかもしれない。

今日はずーんと暗くなるお話。